「キタキツネ物語」という映画

「家族そろって映画館に行く」という行事で、最後に見た作品は忘れもしない「キタキツネ物語」だった

かつて小山市にあった、小さくて汚い映画館…小山劇場w

採算が見込めればポルノでも何でもやる、猥雑なカンジの映画館だった(ジャッキーや李小龍やカリオストロを初めて見たのもココだった さすがにナウシカはココでは見なかったな)

こういうトコのトイレは特に汚い… いまあらためて思い返すといわゆる「ハッテン場」であったのかもしれない(ちなみに宇都宮のハッテン場で有名なのはオークラ劇場かな そうゆうトコ、行ったことないケドw)

同時上映は、たしか「アドベンチャー・ファミリー」だった

昔は客の入れ替えなんざなかったから、お弁当もって映画館に出かけて、同時上映の映画も味わって、半日近く映画館に入り浸ってるコトができた

お目当ての映画より、ついでで見た同時上映のが面白かったりとかもあったょね

駘蕩として牧歌的… まさしく「昭和元禄」ってカンジの時代だった

で、キタキツネ物語

この映画、その後もTVやビデオでなんども再見しているのだケド、初見の時は家族そろってエラく感銘を受けたモノだった

見たのはたしか、10歳頃のクリスマス・イヴだったハズ

見終えた後も何やら胸がうずいていて、レコード屋(うぅ、死語だゎ… 落涙)に寄ってLPレコード(くっ… これまたw)も買ってもらい、それこそ擦り切れるほどに聴いた

唄ってるのは町田義人・ゴダイゴ・知らない女のヒト

みんなまだ全然メジャーじゃなくて、ミッキー吉野も栄養が少なめだったのか、心なしか痩せて見えてた頃だw

この直後に西遊記がTV化されて、それでゴダイゴがかなりメジャーになったんじゃなかったかな

この無名時代、NHKのドラマで水谷豊が警備員役で「ゴダイゴ」の警備を担当するエピソードなんかがあったハズ(だぁれも知らねぇよなw)

そんなワケで、ワタシはかなり初期のゴダイゴファンのハズなのだが、最近のタケカワユキヒデの声の伸びがあまりに痛々しく、彼らがメディアに出演してもできるだけ見ないようにしていたりする

あぁ、また脱線しちゃったw

この「キタキツネ物語」の何にハマったかというと、「流れ者のオトコとオンナが出逢い、子を成し、死別し、いつしか残った者たちはその場所を去って行く…」という辺りに、家族総員が熱くなったコト間違いない

ワタシの父・母はどっちも家出人同士… チンピラあがり(くずれ?)の浮き草みたいな連中だ

流浪の涯、東京の片隅でたまたま出逢い、キズでも舐めあってるうちにワタシを孕んだのだろう

<和田アキ子はキライだケドこの歌↑は大好き♪ 若い頃のウチの父・母の歌だゎょ>

ワタシが生じて一年ほどまで、彼らは日暮里の端切れ屋の二階に住み込み、丁稚の如くに酷使されていたそうだ

折りしも高度経済成長期… 「中卒は金の卵」と持て囃され、徒手空拳・無一文の若者も、努力と運次第で車もテレビも冷蔵庫も雨露をしのぐための家すらも手に入れるコトが可能だった時代

コドモを成した彼らは、より身入りの良い職を求め、一念発起して新興の工業都市に移り住み、ワタシが3つになった時には弟が生じた

生まれてきた弟は、脚が不自由なうえに気弱なコドモだった

加えて、永く生きても40までと言われる病を抱えてこの世に生じてきた

当時、そういったコドモを嘲笑したり蔑視するコトに社会は大変寛容だったから(現代においても差別的な表現や態度こそ表立って見受けられにくくなってはいるものの、本質的な蔑視は何ら変わるコトなく隠然として存在してるケド)、ワタシたち家族はそういったモノから「弟を守り育てる」という一点において、一丸となっていた

そういう実感を抱いたコトのない人々にうまく伝える自信はないのだが、弟を守り育てる… コレは年端もゆかぬコドモであったハズのワタシを含めたあの家族の、一大命題だった

父・母においては、生来の気質やコンプレックス、生育環境の劣悪さなども手伝ってか、ある種「在日朝鮮人」の連中にすら通じる異様なまでの反骨と敵愾心(あるいはもっと端的に「憎悪」と言い換えても良いのかも知れない)を以って、我が家を取り巻く社会だの現実だのと向き合っていたような気がする

そういう彼らに生育されたワタシや弟も同様に、濃淡こそあれ「憎悪」に極めて近い「反骨」を身に育みながら成長した

そんな連中が、キタキツネ物語を、コトもあろうに「一家揃って」見ちゃったのだw

感化されないハズがない

父・母は「子別れの儀式」というヤツに、かなりクラクラときていたようだった

生きていく上で必要な事々をおおかた教え尽くすと、それまで家族を必死に守ってきた親狐が子を攻撃し、その子の独立を促すという習性を描いたシーンだ

彼らはこのシーンにエラく感動していた様子で、家に帰る途中や帰宅してからも殊更このコトを熱く語ったものだった

「おまえたちがオトナになればウチも子別れの儀式をして、それで清々したら、それぞれがまたバラバラに各自の途路を生きていくんだ」とか

「老いてコドモの世話なんかになるくらいなら死んだ方がマシだから、子別れしたらココも売り飛ばしてオレも母さんもスキに生きていくんだ おまえらには帰ってくる場所すら残してやらん」とか…w

母親も母親で、そういった「なかば啖呵のような台詞」におおかた同意しているかの様な剛毅っぷりで、ワタシは彼らのそういう「空つっぱりな啖呵」とか「生きて行く上での姿勢」の様なモノを小気味良く感じながら、その後も育った

<さだまさし:親父の一番長い日>

映画の中に出てくる子狐は、たしか5匹いたと思う

中に目の見えない「チニタ」と呼ばれる子狐がいた

この儚げな子の存在が、キツネ一家が存続していく上での絆を強めているっていうトコも、我が家にはビビッときちゃうワケで、このチニタを守るために家族が色々苦労する姿に、なんだか他人事とは思えない共感を感じていたのは、父・母だけでなくワタシも、そして弟も、きっと同じような想いでスクリーンを見つめていたコトだろうと、当時を振り返り秘かに確信する

物語中盤、チニタは海の波に飲まれてあっけなく死んでしまう

残された子供たちもヒトに狩られたり、過酷な環境の中でうまく生きられず、おおかたが死んでしまう

ただ一匹生き残った子「シリカ」は、かつて流氷を渡ってこの地にやって来た父「フレップ」が、再び流氷を渡ってこの地を独り去っていくのを見送る… ってのがラストだった、かな?

このくだりは、こうやって綴っていても勝手に胸の内が熱くなってくる

たとえソレが人間が手前勝手に創作した物語だと分かっていても、やっぱりこの身の内に息づく体質や成分といったモノに明らかに何らかの作用を及ぼす

「シリカ」とはつまり「ワタシ」なのだと、今でもなんでか勝手にそう思っているからだろう

であるがゆえに、キツネの一家の物語ごときに感銘を受けていたあの頃の「他愛ない程に可愛らしく、しかしながら反骨の気分を濃厚に湛えていた」時の気概を、老いて弱まってしまった今も父・母には持っていてもらいたいものだと、願ってしまう

ワタシが去り、弟がやがて死に、相方に先立たれようが、それでもふてぶてしく、したたかに、また再び流氷の彼方へと、躊躇うコトなく踏み出して行って欲しいものだと願ってしまう

それが、彼らのしてきたやり方だ

去り往く時も、かつての彼らの様であって欲しいと、勝手ながら遠くからそう願っている

ワタシはもはや、彼らが築き必死に維持しようと足掻いていた「家族」というモノを脱ぎ捨てた

ワタシはしたたかに、しなやかに、だけど可愛いオカマとして独り生きていくのだ

かつて父・母がそうしたように

あの家から、定かならぬドコかに流れ、誰かに出逢い、愛し、別れるために

家族とか故郷とか、そうゆうモノから一番遠い場所にまで流れて、ソコで自分の力だけで、全く「新しい」関係を構築するために

「生きていく」というコトは、つまるところそういうコトなのではないか、と思っている

<町田義人:果てしない道>

コメント

  1. ビバメヒ より:

    キタキツネ物語。懐かしい映画ですな。
    動物映画は、物言わぬ動物を用いて、擬人という手法で描かれるので、人が演じる以上に、ストレートに主題が入るよね。私は家族一緒に映画館で見た経験がないので、羨ましい感じがするわ。
    で、キタキツネ物語ですが、あれは泣けた涙目の見えない子が波間に消え去る場面は、悲しかった。私も何度も見た口。
    君のような分析は私は避けるが、今になって思うのは、あんな映画を撮る監督は、『鬼』やなって事。
    青年期に見て泣いた映画は、ロッキー1、エレファントマン、愛と青春の旅立ちくらいと思ってきたが、キタキツネ物語も記憶の沈澱から掬い上げておくとしよう。

  2. 梅ちゃん より:

    読んだよ^^
    それが結論なら
    それはクレアさんの選んだ人生だからね。
    はじめ何度かここに来て読んだあと、
    なんて言えばいいかわからなかった。
    でも特に今は何も言わなくてもいいよね^^
    大切なのは
    自分のココロに 正直に忠実に素直に
    だね^^
    ワタシも心に素直に生きたいな
    無理だとわかっているからなおさら憧れる。
    人間の人生は 自分の思っているようには
    なかなかいかないけども
    そこを なんとかなんとか少ない脳みそで
    考えながら選んで進むしかないんだよね
    これからのクレアさんの人生が
    クレアさんの思うような人生になりますように。

  3. 愛憎絵巻…ヒトとキカイと技術と愛

    ワタシの弟は、肢体不自由児だった

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