改題:かつて見た夢と、その処理にまつわる事々など

<リンク切れにより新動画設置:ASIMO Documentary -FIRST STEP->

はじめてツインリンクもてぎでコイツを見た時は、誇大な表現ではなく、本気で涙を流しながら、その一挙手一投足を見つめていたモノだった

ヒトと同サイズで二足歩行し、階段の昇降すら行えるキカイを、眼前で見せつけられた感動だったのかもしれない

あるいは、「歩行するキカイ」というモノの設計・製作がいまだ黎明期だった頃、ソコに己の夢を賭けたコトがあったからかもしれない

ひょっとすると「そのキカイは他の誰でもない、ワタシこそが造り出すハズの夢の結晶体だったのだ」と、勝手に自負していたから… だったのかもしれない

今でこそ「ロボット」というモノに対する技術研究はずいぶんと一般化して、財力のある家庭であれば、小中学生くらいからでもこういうのの小型版と関わるコトも、さして珍しくはなくなった

制御系の技術革新や、サーボや素材の小型軽量化、そして何よりも低コスト化が進んだおかげで、「ロボットの自作」という分野への敷居が大きく引き下げられたのだ

今を遡るコト30年以上前、ようやく10才になったばかりの頃、ワタシはそういった分野の魁にあたるようなコトに脚をつっこんだ

偶然、NHKの教育で三井康亘老師の製作された「アクリルロボット」を紹介しているのを見てしまったのがきっかけだった

透明なアクリル板と、モーターとギア、そして精緻に設計されたリンク機構とが織り成す「美」が、ソコにはあった

ワタシの少年期とは、コレを設計し造り出すコトに熱中した季節の総称だ

ひと月の小遣いが1000円だった当時の少年にとって、アクリル板を一枚買うのも大きな決心のいるコトだった

2mm厚・55cm×65cmのサイズで2000円近い価格ではなかっただろうか

数ヶ月貯金してそれをようやく一枚買うトコロからが始まりだ

その一枚から、できるだけムダが出ないようにパーツの切り出しを検討する

再三の検討の末、方眼紙に図面をキッチリと引く

そしてようやくアクリル板専用のカッターで少しずつケガキ線を引き、慎重に慎重にケガキ線を深くしていって、ガラスを切るのと同じように「折って切断する」のだが、コレがなかなかに難しい

ヒビが入ってしまったり、キレイに切断できなかったりで、コツを覚えるまでに随分と失敗をする

エンビ板ならすこし粘りがある素材なので、こういう失敗も減るのだケド、そういうノウハウを身体で覚えるのはもっとずっと後になってからだった

キレイに切り出せたら今度はハンドドリルでビス穴をあける

これにもコツがあって、いきなり大きな径の穴をあけたりしてはいけない

穴の中心位置に1mmφの穴をあけ、すこしずつ径の大きなモノで拡げていく

いきなり大きなのであけようとすると、中心がズレてしまったり、板が割れてしまったりして泣きをみることになる

切り出した板の端の方に穴をあける時も慎重にやらなければならない

板の端付近は、無理なチカラがかかると簡単に割れてしまうのだ

そんな風にして、大事に大事にパーツを切り出して穴をあけていく

精度が悪いと、後で組み上げる時になってちゃんとビス穴同士が合わなくなるし、仮に組み上げてもうまく動作しなかったりする

板一枚を買うのに2ヶ月ちかく金を貯め、それ以外にマブチのRE140モーター、タミヤのギアボックスキット、ピアノ線などを買い揃えなければならない(イマイのギアボックスは当時でもなかなか売ってなくて探すのにだいぶ苦労したなぁ…)

なによりも田舎のコドモにとって途方に暮れる事態だったのは、2mmφサイズのビスやナットを見つけるコトだった

自分の街ではどうにも見つけられなくて、やむなく県庁所在地の模型店までいく

電車で行くと往復の費用がかかるから、片道40km、不案内な道のりを自転車で行く

昼前に出発してようやく目的地にたどりつき、目的のビスだけを買い、まっすぐに帰途につく

まっすぐ、一目散に帰るのは、別の模型に目がいかないようにするためだ

空腹を満たしたくなって、つい寄り道したくなるのを忘れるためだ

そうやって陽もだいぶ傾いた頃、ようやく自宅に帰り着く

真冬の、身を斬るような寒風の中でも、そんなコトは一向に苦にならなかった

ロボットエンジニアを夢見た当時の少年は、そんな日々を日常としていた

おそらくだけど、田舎在住のエンジニア志望の少年というのは、多かれ少なかれそんな若年期を過ごしていたのではないか

<三井康亘:不整地用ロボ スモール・タランチュラ>

高校期、理数に蹴っつまずいたおかげで、ワタシはエンジニアには成りそこね、紆余曲折の結果、いま無職のオカマとなった

コスメとファッションと美容に、ゼニの大半を浪費するだけの「この世の誰にも無用の存在」となった

そんな「無用の者」にも、かつて夢があったのだ

この、ASIMOという「自律歩行するコトが可能な人型のキカイ」は、そんな叶わなかった夢を、ワタシの様な者にも想い起こさせてくれる

若き技術者たちに夢よ多かれ

老いた技術者たちに、夢よ再び起これ

そして夢に敗れし者たち

胸に秘めたまま捨てられなかった夢を、そのまま墓場まで抱いて逝け

夢は捨てずに、とりあえず今日の露命を繋ごうぜ

墓場に入るまでには、それが予想もしなかったカタチで実を結ぶコトだってあるってもんだ

オンナになるコトを夢見たかつての少年が、何かの拍子にオカマくらいにはなれたりするコトだって、あながち「ない」ってワケじゃないんだぜ(けっしてオカマになりたかったワケじゃぁないケドねw)

<吉田拓郎:若い人>

追記

<【ASIMO】デモンストレーションステージ 2022年10月追加>

ちなみにこのASIMO、今回とくに目を奪われたのは手指の制御だ

紙コップを握る・ジュースを注ぐ・ソレを落とさずに保持し続ける

コレってスゴイことなんだぜ

紙コップってのはやわらかい素材でできていて、それをつぶさずに持てる

それも、ただそーっと持ってるってワケじゃない

紙コップにジュースを注ぐってコトは、コップが徐々に重くなっていくワケだけど、それでも握りつぶすことなく保持し続けることができるワケだ

ニンゲンは、手指から伝わってくる重量や硬度の情報を脳に送り、それに応じて握るチカラを制御するっていうフィードバックを無段階的に行えるんだケド、ASIMOはそれができるようになったってコトなんだ

固定値の重さ・固さで決まった動作をループ制御してるワケじゃないってトコがスゴイのだ

不測の状況に応じて論理判断するだけでもスゴイのだけど、時々刻々と急速に変化する事態に対して、即座にフィードバック制御して対応できる技術… そのスゴさなんだ

ましてそれを、単機能のマニピュレータとしてではなく、身長130cm程度の人型歩行キカイの中に収めているってコトが偉業なのだ

それはつまり、キカイがどんどん生体に近づいてるってコトと同義だ

コイツの子孫とニンゲンとが共存する日常は、もう間もなくやって来る

コイツの身体機能の一部が、ニンゲンの障害を補う日もきっと遠くない

更に言うならば、ガンダムがセイラさんを手の平に乗っけて、握りつぶすこともなく「スーパーナパーム」を使う日も、気が遠くなるほどに遠い未来ではないと確信させられる

夢ってのは、見続けてみるもんだ

コメント

  1. とも より:

    こんばんは。
    すごいですね。ここまできましたか。
    バランス、ゆらぎのフィードバック
    センサー、演算速度、推定式、関節構造、
    素材、、、、
    とてつもない進化ですね。
    たしかアシモだったかどうだったか、
    発想の転換をすることで成功したという話を
    聞いたような。
    いずれにせよ、鳥肌ものです。
    ともも昔、ロボット、いろいろやりましたよ。
    ロボットってアクリルロボットのような、
    そんなのが主流でしたよね。
    欧米では確か宗教的理由か何かで
    二足歩行は嫌悪されていたような。
    たぶん今でも。
    日本はアトムの第一歩がその後を
    創り出したのかも?
    手塚先生の偉大さ、またここに。
    久しぶりにアシモフの三原則を
    思い出したりして。
    そう、ソフトな、微妙な感覚、
    ちょうどいい塩梅、、機械は苦手。
    ぐしゃりと卵をつぶす映像が頭に。。。
    今、できちゃいますか。すごいですね。
    実はとも、プラモづくりも好きで、
    戦闘機、艦船。
    伊勢、赤城、信濃、長門、秋月、羽黒、
    阿賀野、最上 、、、いろいろ。
    ヤマトは何故か波動砲付きだったりして。
    押し入れの中、秘密基地でした。。。
    ごめんなさい。興奮して支離滅裂でしたね。
    コメントにもなってないような。。。
    失礼しました。

  2. >ともサマ
    米軍でもトンデモない代物を研究してるみたいですゎょ、奥サマ!↓
    http://www.youtube.com/watch?v=mclbVTIYG8E
    最後のシーンの「腕立て」に一体何の意味があるのかゎ少々意味不明ですケド、なんとなく頼りになりそうな体格ですょねw
    ワタシみたいにガタイの良いオカマが、お姫様だっこしてもらいたい時なんか、あんがい重宝しそうな気がしたりしてww
    さすがに軍用に開発されてるだけあって、同じ二足歩行ロボなのに、ASIMOとは佇まいや印象がぜんぜん違いますよね
    アタマにくっついた赤色灯が、これまた意味あるのかよくわかんなくて、「別にこんなのくっつけなくたってよかったじゃん」って、思わずツッコミ入れちゃいましたぜw
    どうせなら、アタマのてっぺんに1/10サイズくらいのフィギュアがガラス張りのコクピットに座ってるのをくっつけたりしてくれれば、「太陽の牙ダグラム」ってなカンジで面白かったのですケド…w
    コレがダグラムならBigDog↓がデザートガンナーってなカンジで、昨今カトキハジメに圧されて劣勢になりつつある大河原フリークが、ふたたび息を吹き返しそうな気すらしてきますw
    http://www.youtube.com/watch?v=W1czBcnX1Ww
    こうゆう技術は、多くの場合軍用が先行して徐々に民間に下りてくるモノですケド、ASIMOにしろ、ムラタセイサクくんにしろ、民間が先行して開発してくれてるのが日本のステキなトコだなぁと思います
    現今の日本のロボット技術ってゆうのは、手塚という「花咲か爺」がまいた種子が、様々なところで芽吹いた結果なんでしょうね
    夢を具体的なカタチにする技術…
    そうゆうモノに少しでも携われるとステキですね

  3. ビバメヒコン川 より:

     ASIMOには、無限の可能性を感じるよね。心高ぶる感じ。これに、最近出来た最高の人工知能を搭載すれば、本当にアトムの世界になってしまうかもね。ただ、「感情」の再現はかなり困難だとのことだから、そうすぐにはならないでしょう。
     ASIMOに関しては、開発時、ホンダの相当の偉いさんがローマ法王を訪問して、「作成することをお許し頂いた」って知ってる?キリスト教は、本当に傲慢きわまりないよね。

  4. とも より:

    おかしい~ なに このバカマッチョ
    ボストンダイナミクス、あっ MTNではもう完全人型
    OKなんだ。軍関係だから? それともアメリカは気にしない?
    ボストンダイナミクスのHP 面白い~ 
    スターウォーズを真剣にやってる
    これはそのうち実戦配備やってしまいますね(怖、ホントに)
    すずさんすごい! よく見つけてきますね。
    ところで、あれダグラムでしたっけ? 
    敵をまってず~っと待機してるシーン
    すっごく印象に残ってます
    産業構造の日米差異
    米国は軍からのトリクルダウン
    でも機密保持がうるさい
    日本は民間から
    これは日本の一つの良さ? でしょうね
    やっぱりともも日本のロボットの方が
    なんか平和的、どこかフェミニンで
    しっくり来る気がします♪

  5. とも より:

    鈴音様。こんばんは。
    非常に危ういことをしているかもと思いつつ
    あるいはペイモンに魅入られている
    のかもしれません。。。
    男の娘の思考について、
    どうなのだろうと思いが募りました。
    聡明な鈴音様から
    ご意見賜りましたら嬉しいのですが。
    もし失礼なことであったり、
    ご興味がなければ、本コメント
    まるごと削除し、お忘れいただければ
    幸甚にございます。
    鈴音様はともにとって
    六条御息所さんを彷彿とさせる
    女性としての情の深い方、
    ただその思考形態の
    根底は男性性が
    残っているのかもとも。
    もちろん男脳・女脳の議論自体、
    とんでも科学という説もありますが、
    もしできましたら鈴音さまのご意見、
    うかがうことができれば大変ありがたく。
    もし面倒、あるいはご不快であれば、
    先に記しましたとおり、
    このコメントを削除し
    お忘れいただければ幸いです。
    http://ameblo.jp/tomo0911virgo/entry-11077355120.html
    とも

  6. m(,_,)m 大変な失礼を より:

    誤:鈴音 → 正:涼音 m(,_,)m

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