決められる政治なんていうのは、この国には不向きなのです

この国土の上に乗っかって暮らしているヒトビトには、常に己の肝に銘じ、常に己を律しておかねばならない精神疾患がある

その気質… 大勢たいせいに迎合しやすく、ファナティックで、にもかかわらず、すぐにその熱狂を忘れてしまうという三つ… は、おそらくきっと、上古以前から患っている慢性疾患に違いない

一種の享楽主義と言って良く、しかし同時に、無責任このうえない刹那主義でもある

それは、不確かな風土に晒されて、それでも生きてゆかねばならなかった者特有の、ある種の民族的な処世術なのかもしれない

四季は移ろい、厳寒と酷暑に苛まれ、夏には野分吹き荒れ、川は暴れ、その度に田畑は水に浸かり、地は鳴動し、山は火と灰を吹き上げ、大波が襲い、ひとときとして安定することのないこの風土に晒されて生きる以上、身を安んじて頼れるような確固とした拠り所などこの天地のドコにも求めようがなく、それゆえにワレワレは享楽的に、刹那的にならざるを得なかったのではないか

そんな頼り甲斐のない、不確かな風土に包まれて育んだ精神疾患は、時として社会に活況を生む

珍奇なモノを目ざとく見つけ、持ち上げ、煽り、迎合し、熱狂し、浮かれに浮かれ、そしてある時、突如として熱が冷めてハッと我に返り、我に返った途端 冷酷なほどにあっさりとそれらを汚物の如く過去へと押し流し、押し流すとスグ次の珍奇なモノを探しに街へと出かけてゆく

<The Timers:三部作>

この気質は、一種の集団発狂だ

さして罪のない程度の集団発狂であれば、それはいちいち咎めだてするほどのコトもない

ションベン臭い小娘どものグループや、半島由来の整形男子に浮かれて熱狂している程度ならカワイイものだ

しかし、そうではない点においても、ワレワレは頻繁に集団発狂する

そういう体質のワレワレにとって、ネットを媒介とした昨今の世論形成ツールは極めてキケンだ

世論誘導しやすいツールだけに… そして世論誘導されやすい体質だけに… この国土の上に乗っかって生きているヒトビトにとっては、強毒性の劇物だと言っても良い

ただでさえ、ワレワレは集団発狂しやすい体質なのだ

ただでさえ、ワレワレは大勢に迎合しやすい体質なのだ

放っておけば、ただでさえ全体主義が蔓延しやすい社会なのだ

そういう種類の精神疾患を、最悪のカタチで発露させてしまった歴史を、ワレワレはつい60年ほど前に持ったばかりなのだ

そういう自分自身の気質というモノを、常に危ぶんでおかなければならない

大衆に迎合し、大衆を扇動し、そうして沸き起こった「民意」という馬鹿馬鹿しい風を孕んで高々と中空に舞い上がる大凧のような存在… そういうモノを待望する風潮をポピュリズムと呼ぶ

この国土に生まれ育ったワレワレは、生まれながらの体質としてそういう気分を好む

篝火を焚いてそれを囲み、車座になって濁酒を喰らい、鼓を鳴らし、足を踏み鳴らし、歌い、踊り、歓叫し、相姦しあっていた上古の昔から、それはきっとそうなのだ

それゆえ、この国において「民意」の二文字は、錦の御旗のごとくに振りかざされ、この二文字を前にしては何人もコトバを失わざるを得ない

みんなが熱狂して向かって行く方向が正しい民意であり、その民意の実現こそが目指すべき幸福なのだ… という風潮を民主主義と呼ぶのだとすれば、ワレワレ日本人ほどに民主主義的なヒトビトはないに違いない

しかし、みんながみんな熱に浮かされて集団発狂して行軍してゆく方向が常に正しいハズはなく、往々にして間違いが発生する

流行り廃りが本分の、文化面に発露しているうちは、そういった精神疾患にも目を瞑ろう

しかし、この国のヒトビトが社会に対してその気質を発露させようとする時、心あるヒトビトは常に警戒を怠ってはならない

「決められる政治」とかなんとか、そういうモノを求める世の風潮や、そういう文言を声高に喚いたりする指導者… そういう連中が幅を利かせようとしている時は殊に要注意だ

<外山恒一:2007年 政見放送>

無責任で享楽的で大勢迎合が大好きなヒトビトの集まりは、妙に意気込んで分不相応な決断などしないほうが良い

この国は、その民草は、熱に浮かされて決断などしてはいけない

そういう決断などした時は、往々にしてロクな流れにはならない

ワレワレの国に大統領制が馴染まないのは、そういういきさつによる

責任と権利に裏打ちされた個人主義が、国民の隅々にまで行き渡っていない連中のクチにする民主主義など、全体主義と何ら変わらないし、それはすなわち衆愚政治でしかない

政治家という連中が、資本家や農協や漁協や労組をはじめとする各利権団体のかつぐ神輿でしかなく、そういう神輿どもが辻々で繰り広げるケンカ神輿のごときモノがこの国における政争だとすれば、各神輿のチカラはできるだけ均一に分散させておくのが上策だ

神輿を担いで錯乱している馬鹿や、神輿になって好い気になっている馬鹿どもが、他の神輿や神輿担ぎどもとぶつかりあい、互いに砕けあっていく様を、冷やかし半分で遠巻きに見物しているくらいが丁度いい

特定勢力が過半数を占めるような状況は、可能な限り回避させるのがこの国のヒトビトの身の丈に見合った巧いやりくちなのだ

<美空ひばり:お祭りマンボ 熱に浮かされて家を焼かれたり家財を盗られたり大事な人を失うコトなかれ、皆の衆>

そうやって、いつまでたっても日和見で、いつまでたっても煮えきらず、いつまでたっても中途半端なまま、政治などにはさしたるチカラを与えないでおくのが良識的日本人の在りようというものだ

酷寒酷暑に晒され、暴風雨に晒され、地震や津波といった天災にも翻弄され、その度にあたふたと逃げ惑い、愛する者を失い、わずかな蓄えも失い、慟哭し、落涙し、それでもソレを享け容れ、それでもソコから離れられずに生きてきたのがワレワレではないか

これまで同様、大陸や半島からの脅威も、原発も、TPPも、消費税値上げも、基地も、オスプレイも、拉致問題も、ワレワレは享け容れていかざるをえない

これまで決断しないまま先延ばしにしてきた様に、これからも決断しないまま先延ばしにしてゆくのが、この国の民草に似合った在りようだ

そういう自己の在りようが堪らなくイヤで、どうしても本当に決断したいのならば、各人が自らの精神疾患を自覚し、自律的にその気質を制御できるほどに、自己を確立せねばならない

自らの意志でワレワレ自身の体質改善を試み、七転八倒してでもそれを果たさぬ限り、その在りようの根幹が変るコトなどあるハズがない

この国の民草の各々が、大勢に迎合せず、自己の利権・欲得に基づいた神輿をも担がず、社会全体の利益(日本の国益というだけの意味ではなく、広い意味でセカイとか地球とか宇宙といったものの公益)のために己や己の身内の不利益すらも覚悟できる程の無私に徹するコトができるようになったら、ようやく重い腰をあげて決断すると良い

それまでは、民主主義という名の全体主義など担がぬコトだ

妙な妄言・気運・風潮に踊らされ、「決められる政治」という名の全体主義に手を貸すくらいなら、せめて決められない政治を現出させるための一票を投じよう

アナーキストのオカマは、誰に言うともなく朝焼けにそう呟いた後、深く吸い込んだ早朝の冷気に身震いして、そそくさと部屋へ逃げ込んで行った

<よしだたくろう:ふるさと>

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