不孝を重ねた成れの果ての備忘

すっかり忘れていた

どう足掻いたところで決して女になれはしないのだから、望んで仮に得たところでどうせ失うだけなのだから、だから望まぬ方が良いのだと、ここ数年ずっと考えてきた

しかしそうではなかった

父も母も弟も、相方も、帰るべき家も己の将来も全て棄て、全て諦めてでもなろうと選んだオカマ道なのだから、だから絶対ならなければダメなのだ

彼らとワタシとに訪れた今のこの在りさまは、ワタシ自身の極めて利己的な「我欲」から生じた惨状だが、それゆえに、その惨状に巻き込んでしまった人々に、裏切ってしまった人々に、泣かせてしまった人々に、ワタシは報いなければならないのだ

この手で不幸にしてしまった人々のためにも、ワタシはちゃんとしたオカマにならねばならないのだ

でなければ彼らが、あまりに可哀想すぎる

でなければ彼らが、あまりに報われなさ過ぎる

たびかさなる哀しみのあまり、大事なコトを忘れていた

しかし決して忘れてはならないコトだった

この脳髄と身体とに、深く刻んでおかなければならないコトだった

我欲を昇華し、己の「果たすべき責務」へと変じてしまわなければならない

これは償いだ

己が殺めてきた者たちへの贖罪だ

ワタシ自身が痛かろうが哀しかろうが、そんなコトはもはや問題ではない

残り少ない時間の中で、せめて今よりもちゃんとしたオカマにならなければ、地下で彼らに合わす顔がない

高熱に喘ぐ弟を、どうしてやるコトもできぬままただ見守るだけの悪夢から醒めた備忘として、此処に刻む

<梅宮辰夫:番長ブルース>

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