吉野弘 「生命は」

生命は:吉野弘

生命は

自分自身だけでは完結できないように

つくられているらしい

花も

めしべとおしべが揃っているだけでは

不充分で

虫や風が訪れて

めしべとおしべを仲立ちする

生命は

その中に欠如を抱き

それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分

他者の総和

しかし

互いに

欠如を満たすなどとは

知りもせず

知らされもせず

ばらまかれている者同士

無関心でいられる間柄

ときに

うとましく思うことさえも許されている間柄

そのように

世界がゆるやかに構成されでいるのは

なぜ?

花が咲いている

すぐ近くまで

虻の姿をした他者が

光をまとって飛んできている

私も あるとき

誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき

私のための風だったかもしれない

「空気人形」は、美しい物語だ

空虚で無意味な人形を愛し慈しんでくれた者たちの存在に「意義よ在れかし」と…

空虚で無意味な人形を取り巻き、か細い糸で繋がってくれている有縁の者たちの存在にも「意義よ在れかし」と…

そして同様に、空虚で無意味な人形でしかない己自身の存在をも「せめてわずかでも、意義よ在れかし」と…

そんな、慈しみ深い祈りに満ちた、とても美しく、とても切ない物語だ

<「空気人形」より:吉野弘「生命は」>

コメント

  1. とも より:

    生命が高等になればなるほど
    自己完結できないメカニズムに支配される
    遺伝子学的に見れば
    それは劣性遺伝子の発現を防ぎ、
    進化を促するから
    人の感情は、そんな肉体と
    進化へと向かう 
    利己的な生命の理に
    束縛されている
    それでもわき上がる感情は本物
    甘く、切なく、愛おしい
    すてきな記事 ありがとう

  2. >ともサマ
    バクテリアも、虫も、魚も、鳥も、そしてワタシも、特段の理由もなく無意味にこのセカイに生じ、特段の理由もなく無意味に他者を殺して喰らい、特段の意味もなくかろうじて今日を生き永らえ、特段の意味もないまま、ある日とつぜん、その生を終えねばならない
    そんな日々の営みの中にあって、それでも「ソコに居るだけでキミにはちゃんと意味があるんだ」と言い切る勇気も根拠も、今のワタシにはありません
    でも、そう言い切るためのヒントが、この短い誌の中には見つけられるような気がします
    ワタシはあの時、誰かのための虻たりえていただろうか
    ワタシはこの先、誰かのための風たりえていられるだろうか
    いつかは、そんな疑問すら抱くコトも忘れ、誰かと無邪気に関われる者になりたいものです
    同時に、「このセカイに存在するコトの意味に苦悩を抱えるヒトも、いつか同じような心境に至れる時が訪れますように…」と、衷心から祈ります
    そうゆうヒトビトへの祈りと、暗喩的なメッセージとして、この詩をココに刻みます

  3. とも より:

    ともにとってはね
    ロビンさんがいてくれて
    救われてるょ ホント
    (ロビンちゃんの心に、ともは、なかっとしてもね)
    ありがとう
    でも モンハンきたら
    ちょっとご無沙汰になるかも
    とも熱中したら
    まわり見えなくなるから、、
    ご無沙汰で
    またあらわれても
    邪険にしないでね お願い
    春風の約束 一緒にピグ釣り
    一方的にだけど 楽しみにしてる

  4. >ともサマ
    皮肉屋の中年オカマにはもったいない御言葉、光栄の至りでアリマスるょ
    モンハンは、信onで仲良しだったおともだちを追いかけて行って、PS2のDOSってゆうのをちょっとだけやったコトあるかな
    ワタシはアクション系が大のニガテなので、残念ながら長続きしませんでしたケド…
    せめてチャットのログを保存できる仕様だったら、もうちょっと長続きしたかもしれないんだケドなぁ{%一言・ザンネンhdeco%}
    今度のモンハンは3DSなんですってね
    ポータブルゲーム機だと、ネット越しのプレイの時はマクロによる対話が主体になりそうで、自由自在のおしゃべりというワケにはいかなそうですね
    「電車でPSP持ってると、『やろうぜ』って目で誘ってきて、ソレにどう応じるか迷うんだょ」ってゆうのを、何かのメディアで見聞きした覚えがあるんですケド、ソレはソレで新しいコミュニケートの手法っぽくてナカナカに興味深いです
    ついこないだの発売ってコトですから、今からやり込めばだいぶ楽しめそうですね
    寝不足して御身体を酷使したりなさいませんように…{%一言・ガンバレhdeco%}
    またのご来店をお待ちしておりまする{%一言・ペコhdeco%}

  5. ビバ☆メヒコン川 より:

    ときに
    うとましく思うことさえも許されている間柄
    そのように
    世界がゆるやかに構成されでいるのは
    なぜ?
     何故なんだろうね。しかし、こんなにゆるやかに構成されていても、各地で戦争は起こる。
    お互いがお互いを癒し合う存在であるはずなのに、何故衝突してしまうんだろうね。
    実はこの詩、夏頃、仕事で使って、沢田聖子の「風になりたい」も同時に流して感想書いたりしてたんだな。
     ヌークリアーパワーが風に乗るのは勘弁だけどね。

  6. >ビバ☆メヒコン川サマ
    「ゆるやか」に構成されているが故に、妙に手応えが感じられなくて、虚無感にとらわれやすかったりするのが、この「セカイ」ってヤツの小憎らしいトコですよね
    もっとリジッドに構成されていたなら、噛めば噛んだ分だけの歯応え、殴れば殴った分だけの手応えもしっかり返ってきて、酸いも甘いもキッチリと味わえる相手に感じられるんでしょうに…
    そうゆう手応えの無さこそが、「セカイ」ってヤツに対して「敵意」とか「憎悪」ってゆうのを生じやすい原因なのかもしれないですよね
    3年前に秋葉原で起こった無差別殺傷事件なんかは、きっとそうゆうコトを一因とした「敵意・憎悪」の発露だったんじゃないか… などと考えたりします
    まぁ、あの事件と戦争とを一括りにして論じてしまうのはさすがに無理があるコトなのですケド、戦争が起こる原因のいくつかの中から「利害」というコトを除いたなら、あとはもう「敵意」とか「憎悪」くらいしか残らないですよね
    「利害」ってゆうのも、ヒトが争い合う充分な理由になるとは思うんだケド、それ以上に、「民族的・信条的な憎悪」と解釈する方が、特に最近セカイ中で頻発している紛争を説明する上でけっこう有効な気がします
    ↓へつづきます

  7. ↑のつづきです
    この「セカイ」ってヤツが「ゆるやかに構成」されているが故に、生きているという手応えは実感しにくく、それ故に心中の虚無感は膨らみやすく、向ける先すら判然としない憎悪は育ちやすい
    心中に充満した虚無感とか憎悪って、きっと極めて可燃性の高いガスみたいなモノであって、そんなモノが高圧で充満してるトコロというのは、何かちょっとしたきっかけがあれば、すぐにでも引火・爆発・炎上が起こしちゃう
    その時に、誰かが作為的に「目に見える敵」を明示したりすれば、爆発・炎上のエネルギーは雪崩をうったかのようにして、目指すべき敵に向かって奔るんじゃないでしょうか
    そうゆうコトの応酬と連鎖によって、憎悪が憎悪を呼んで収拾がつかなくなってしまっているのが、昨今の紛争の根底であるように思えてなりません
    そう考えると、ふた昔ほど前の紛争の主題であった「~経済圏」とか「~主義」とかでの拮抗の方が、よほど解決しやすいテーマだったのかもしれないですね
    現代の紛争の根底には、「感情」という制御しがたいモノがあまりにも根深く横たわってしまっていて、もはや「利害の調停」とか「思想的な潮流の盛衰」なんてゆうモノでは解決不能な状況にあるように思えます
    ちなみに沢田聖子の「風になりたい」って、拓郎のカヴァーだったんですねぇ
    川村ゆうこのヤツは知ってたケド、沢田のはぜんぜん知りませんでした
    むかし深草にあったタキタロウの下宿で、ギター抱えて想いを込めてコレを歌ってたら、近江の伸太郎がボソリと一言「キモチわりぃ…」
    「悪かったゎね どうせあたしにゃオカマの成分が濃厚に入ってますょーだ!」とゎ、あの頃のワタシには言えず、ただ黙ったままだったコトを、今ココに告白しますょ、えぇw
    遠い遠い、むかしのコトなんですねぇ…{%涙(ヒタヒタ)hdeco%}

  8. ビバ☆メヒコン川 より:

     近江のウータンは、意外にも、二人の心に深い傷跡を残していたのだなぁ。私の「懸論」といい、「キモチわりぃ」といい、奴が一番の策士だったのかも知れんな。

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